授業3:LiveのMIDIデバイス「Chord」を使ってみよう
授業の概要
和音理論(コード理論)は難解ですが、LiveのMIDIデバイスを使えばキーボードのひとつの鍵を押すだけで和音を鳴らせるので、わかりやすく学習を行うことができます。 この授業では、生徒がChordと呼ばれるMIDIデバイスを使って和音を鳴らす方法を学びます。 また、Scaleと呼ばれる別のMIDIデバイスを使うことで、曲の調(キー)に収まる和音を作成することも学びます。 そして創作実習では、ベースラインに対して和音の伴奏を加えます。
学習の意図
分析と聴解力:生徒が、音と音の間隔(音程)、3和音、4和音をそれぞれ区別する方法を学ぶ。 また、平行和音(パラレル・コード)、ダイアトニック・コード、モーダル・コードの違いについても理解する。
技術リテラシー:生徒が、MIDIデバイスを使ってMIDI情報に変更を加える。
創造性/音楽性:生徒が、楽曲、映画音楽、ゲーム音楽などで、和音の音楽的構造が一般的にどのようなイメージとつながっているか連想する。
準備
メロディーをMIDIで録音する生徒の技術度に応じて、適宜、補足教材を選ぶ。
Liveセット“Harmonize a Bassline”をダウンロードして、各コンピュータで開けるよにしておく。創作実習(後述)で使用。
生徒が自分の作品を共有できるように、教室の再生機器を利用できるようにする.
授業
(1)はじめに:和音とは何かを説明し、さまざまな音楽スタイルの和音進行の例をいくつか演奏する。
(2)創作実習の説明:生徒にChordで短い和音進行を作成してもらう。Scaleを併用する場合と併用しない場合で、それぞれ和音進行を作成してもらう。
(3)創作実習:生徒がLiveセット“Harmonize a Bassline”を使い、短いベースラインにChordとScaleで和音を加える。
(4)生徒の作業結果の発表と講評:生徒が作成したファイルをアップロードし、自分の和音を演奏するほか、他生徒の和音に対して講評を行う。
はじめに:和音とLiveのMIDIデバイス「Chord」
和音(コード)とは、3つ以上の音を同時に鳴らしたものです。 理論上では、3つの音であれば、どんな組み合わせでも和音になりますが、実際には、特定の組み合わせのみが、心地よく聞こえます。 和音の仕組みは複雑になることもありますが、LiveのMIDIデバイスであるChordを使うと、心地よい響きの和音進行を簡単に作成することができます。
和音理論(コード理論)をどれくらい深堀りするかは、 任意です。 和音に馴染みのない生徒の場合は、Chord*のさまざまなプリセットをトラックに読み込んでもらい、MIDIノートを鳴らしたときに各プリセットでどうなるか聞いてもらうといいでしょう。
*Chordの後ろにScaleを読み込むと、おもしろい結果を得やすくなります。 詳細については、次のガイドを参照してください。
さまざまな和音や仕組みについて詳しく説明するにあたっては、次のガイドが便利です。 Chordについて詳しく説明しているこのガイドでは、Chordの機能性の背景にある音楽理論を理解することができます。
Chordの理解を深めよう
ガイド“Chordの理解を深めよう”では、Chordのパラメータをはじめ、Chordの出力の録音方法を説明しています。また、ダイアトニック・コードやパラレル・コードといった関連する音楽理論の概念のほか、異なる音程から和音を構築する方法についても説明しています。
【ガイド】Chordの理解を深めよう
学習の基礎:Chordのための補足教材
和音や和音の音楽的な使い方を学習するにあたって、生徒に補足が必要になることがあります。 次の一覧では、教材をわかりやすいものから順番に並べています。
ウェブサイト「Learning Music」のチャプター“コード”
Learning Musicというウェブサイトに含まれるチャプター“コード”は、この学習指導案の補助教材に適しています。 Learning Musicで作成したフレーズを書き出せば、Liveで開いて使うことができます。[Liveにエクスポート]と書かれた箇所をクリックして、書き出しを行ってください。
【ウェブサイト】Learning Music:コード
ChordChord(コードコード)
ChordChord(コードコード)は、4つの和音でループを生成してMIDIとして書き出すことができるウェブアプリです。
【ウェブサイト】ChordChord
音階から和音を作る方法
この学習指導案の作成者であるイーサン・ヘインが、音階から和音を作る方法を記事にまとめています。和音と音階の理論を解説しているほか、どの音階も構成音を特定のパターンに並び替えて和音に変えられることを説明しています。 この手法は、多くの種類の音楽を理解するうえで便利で、ジャズの和声の基礎にあたります。
【記事】音階から和音を作る方法(英語)
和音辞書
この和音辞書では、西洋音楽で広く使われている和音がまとまっており、表記や関連音階、構成音を確認することができます。 和音の仕組みを説明する一連の動画にアクセスすることもできます。
【ガイド】和音辞書
創作実習:ベースラインに合う和音を鳴らそう
この実習では、生徒がベースラインに合わせて和音(コード)を伴奏します。また、ベースラインに含まれる音と適している和音になるように、LiveのMIDIデバイスであるChordとScaleを使います。
付属するLiveセット“Harmonize a Bassline”には、ビートとベースラインが含まれています。 クリップのない空のトラックには、メジャー・トライアドに設定されたChordと、ドリアン・モードに設定されたScaleが読み込まれています。
実習内容は、和音と音階を組み合わせてベースラインにのせる4小節の和音進行(コード進行)を作ることです。 キーボードでどの鍵を弾いてもかまいません。どんな音も、Chordによって、メジャー・トライアドに変換されます。 そしてメジャー・トライアドを構成する音が、Scaleによって、Cドリアン・モードに収まるように変換されます。
実習の順序
Liveセット“Harmonize a Bassline”を生徒に開いてもらう。 このLiveセットには、ビートのトラック、ベースラインのトラック、空のトラックが含まれており、空のトラックで自分の和音を生徒に作ってもらう。
生徒に4小節の和音進行を空トラックへ録音してもらう。 生徒は好きな音を弾いてかまわない。どんな音でも、Chordによって自動的に和音が生成され、その和音がScaleによってCドリアン・モードに収まるように変換される。
時間がある場合は、各生徒の和音を授業で再生して、建設的な感想を求める。
Liveセット“Harmonize a Bassline”
【Liveセット】“Harmonize a Bassline”
Liveセット“Harmonize a Bassline”には、4つのトラックが含まれています。
ドラムマシンによるビートのトラック
Cドリアン・ドミナント・モードのベースラインのトラック
エレクトロニックピアノを読み込んだ空のトラック ※このトラックで生徒は和音進行を録音します。 ひとつの音を鳴らすだけで、ベースラインに適した和音が生成されます。
和音進行の参考トラック ※参考として2小節の和音進行が入っています。このトラックはミュートになっています。音を聞くにはミュートを解除する必要があります。