授業2:LiveのMIDIデバイス「Scale」を使ってみよう
授業の概要
この授業で、生徒は音階(スケール)の概念に触れ、 有名な音楽作品で使われているさまざまな音階を聞きます。 また、MIDIコントローラやLiveのMIDIデバイスであるScaleを使って、複数の音階と旋法(モード)を試します。 最後に、Scaleをフリジアン・ドミナント・モードに設定して短いメロディーを作ります。
学習の意図
音楽理論:音程と音階の名称を学ぶ。音階のさまざまな表記方法(音名、五線譜、音階ネックレス)を知る。
分析と聴解力:音を聞いて、実世界の音楽と音階の関係を考える。
創造性:さまざまな音高の組み合わせによって異なる雰囲気や連想がどのように生まれるかを知る。メロディーを書くための原料として複数の音階を使う。
準備
付属教材のフォルダ“Templates”からLiveセット“Demo & Sketch”をダウンロードして、各コンピュータに読み込む。創作実習の説明(後述)で使います。
Liveセット“Phrygian Dominant Challenge”をダウンロードして、各コンピュータで開けるようにしておく。創作実習(後述)で使用。
授業
(1)はじめに:音階の概念について説明し、音階の例を演奏する。
(2)実演説明:Liveでさまざまな楽器を選んで演奏する方法を実演する。
(3)創作実習の説明:生徒がScaleをMIDIトラックのひとつへ読み込み、白鍵を使って即興で演奏して、どんな音になるか聞く。
- (4)創作実習:生徒がLiveセット“Phrygian Dominant Challenge”を使い、フリジアン・ドミナント・モードで短いメロディーを作る
はじめに:音階とLiveのMIDIデバイス「Scale」
音階とは、高さの異なる複数の音から気持ちよく聞こえる音の組み合わせを選んだものです。 音階に含まれる音をひとつずつ鳴らしてメロデイーになり、複数の音を同時に鳴らせば和音(コード)になります。 何百種類もの音階があり、それぞれに異なる雰囲気や個性があります。 LiveのMIDIデバイスであるScaleを使うと、さまざまな音階を簡単に試すことができます。
Scaleに入力されるMIDIノートは、設定中の音階にしたがって、音の高さが変わります。 そのため、どんなMIDIノートを鳴らしても、音階に含まれる音を鳴らし続けることができます。
音階の学習は複雑になることがありますが、Scaleを使えば、多彩な音階や旋法を使って音楽をすばやく作成することが可能になります。 音階名と音階の音程構造を生徒に学んでもらうにあたって、耳で聞いて身につけるところから始めるといいでしょう。
授業の始めにScaleの仕組みを簡単に紹介し、複数の音階を読み出して独自に変更する方法を実演しましょう。
創作実習の説明
手順
新しいLiveセットを開く。もしくは、LiveのブラウザーからLiveセット“Demo & Sketch”を開く。
ひとつのMIDIトラックのアームを有効にして、MIDIキーボードの白鍵でCから次のオクターブのCまで鳴らす(Cメジャー・スケール)。
引き続き白鍵でCメジャー・スケールを鳴らしながら、MIDIトラックにScaleを加える。 生徒にも白鍵でCメジャー・スケールを鳴らしてもらいながら、ScaleのさまざまなプリセットをMIDIトラックに加えて音の変化を聞いてもらう。
Scale内のマス目をクリックして有効/無効にしながら、引き続き白鍵を鳴らして音の変化を聞く。
生徒にもScale内のマス目をクリックして有効/無効にしてもらいながら、白鍵を鳴らして音の変化を聞いてもらう。
次の教材は、音階の概念を生徒に紹介するときに役立ちます。さまざまな音階の例のほか、音階を目と耳で確認しながら知ってもらえるツールが含まれています。
Liveセット“Demo & Sketch”
Liveには手本用のLiveセットが付属しており、Liveのブラウザーから読み込んで使用することができます。 Live 11に付属しているLiveセット“Demo & Sketch”では、楽器やループが事前に用意されており、生徒に作業をしてもらう際のきっかけとして使用できます。
その他の方法
Liveセット“Demo & Sketch”を使うと、事前に用意された楽器やループで生徒にすばやく作業してもらうことができますが、必ずしも使う必要はありません。
音階と雰囲気の関係
こちらのウェブサイトでは、洋楽のポップやロック、ジャズ、映画音楽のほか、多くのジャンルでよく使われる音階を一覧としてまとめており、各音階の一般的な雰囲気や感覚と一緒に確認することができます。
【記事】音階と雰囲気の関係(英語)
Omni(オムニ)
こちらのウェブサイトでは、音階を円の形で表しており、コンピュータのキーボードやマウスを使って演奏することができます。
【ウェブサイト】Omni
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次の教材は、Scaleの実質的な仕組みについて説明しています。
Scaleの理解を深めよう
このガイドでは、Scaleの仕組みやパラメータに関する詳しい説明のほか、Scaleから出力したMIDIノートの記録方法を確認することができます。
【ガイド】Scaleの理解を深めよう
Scaleのプリセットを理解しよう
このガイドでは、Scaleの全プリセットが一覧になっています。各音階の説明をはじめ、音楽様式、時代、ジャンルの異なるさまざまな楽曲も紹介しています。
【ガイド】Scaleのプリセットを理解しよう
創作実習:フリジアン・ドミナント・モードのメロディー
この実習では、生徒がScaleを使ってフリジアン・ドミナント・モードで短いメロディーを作り、そのメロディーを生徒に聞かせます。
付属のLiveセット“Phrygian Dominant Challenge”には、ビートのトラック、ベースラインのトラック、シンセの空トラックが入っています。シンセの空トラックには、フリジアン・ドミナント・モードに設定されたScaleが読み込まれています。 実習内容は、このフリジアン・ドミナント・モードのScaleを使って4小節のメロディーを作ることです。
実習の順序
生徒にLiveセット“Phrygian Dominant Challenge”を開いてもらう。
各生徒に4小節のメロディーを空トラックへ録音してもらう。 どんな音の高さのMIDIノートでも、Scaleに入力されると自動的にCフリジアン・ドミナント・モードの音に変わります。
時間がある場合は、各生徒のメロディーを授業で再生して、建設的な感想を求める。
【ポイント】生徒が実習を終えたら、Liveセットを再生して、作ったメロディーを教師や生徒同士に発表させてもいいでしょう。もしくは、オーディオファイルに書き出して提出してもらってもかまいません。
Liveセット“Phrygian Dominant Challenge”
【Liveセット】“Phrygian Dominant Challenge”
Liveセット“Phrygian Dominant Challenge”には、4つのトラックが含まれています。
ドラムマシンによるビートのトラック
Cフリジアン・ドミナント・モードのベースラインのトラック
ScaleをCフリジアン・ドミナント・モードに設定したシンセの空トラック ※このトラックで性とはメロディーを録音します。
メロディーの参考トラック ※参考として1小節のメロディーが入っています。このトラックはミュートになっています。音を聞くにはミュートを解除する必要があります。
学習の基礎:Scaleのための補足教材
音階や音階の音楽的な使い方を学習するにあたって補足を必要とする生徒がいる場合は、次の教材を使ってもかまいません。
ウェブサイト「Learning Music」のチャプター“ノートとスケール”
Learning Musicというウェブサイトに含まれるチャプター“ノートとスケール”は、この学習指導案の補助教材に適しています。 Learning Musicで作成したフレーズを書き出せば、Liveで開いて使うことができます。[Liveにエクスポート]と書かれた箇所をクリックして、書き出しを行ってください。
【ウェブサイト】Learning Music:ノートとスケール
動画「Push 2を学ぶ:メロディーを演奏する」
Pushを使うことができる場合は、動画「Push 2を学ぶ:メロディーを演奏する」が補足教材として便利です。この動画では、Pushのパッドとさまざまな手段を使って音階やフレーズを演奏する方法を実演しています。Pushでは、特定の音階に含まれる音だけを鳴らすように設定することができます。
【動画】Push 2を学ぶ:メロディーを演奏する(日本語字幕)
aQWERTYon(アコーティオン)
aQWERTYon(アコーティオン)は、ニューヨーク大学の音楽実験デザイン研究室(英語)によって制作されたウェブアプリです。さまざまな音階を視覚的に把握しながら、コンピュータのキーボードで演奏することができます。
【ウェブサイト】aQWERTYon
*この学習指導案の作成者が研究室の一員として設計に携わっています。
Guitar Dashboard(ギター・ダッシュボード)
Guitar Dashboard(ギター・ダッシュボード)は、ギターの指板で各音の音階の指配置を視覚的に把握できるウェブアプリです。
【ウェブサイト】Guitar Dashboard