授業1:身の周りの音を録音しよう
授業の概要
この授業で、生徒は日常生活の音を音楽に変えることについて学びます。 生徒同士で協力して身の周りの音を発見し、録った音を評価して、発表します。
学習の意図
- 共同制作:生徒たちと効率的に作業することを意図しています。
- 技術リテラシー:録音機器を理解して効果的に使用することを意図しています。
- 批評的思考:音や音楽の性質について考えることを意図しています。
- 批評的聴取:録音を聞いて音の明るさや音色の違いを識別することを意図しています。
準備(10~15分)
- 利用できる機材を検討し、どのようにして生徒に身の周りの音を録音してもらうか考えてください。
- 録音時のチェックリストを生徒に渡せるようにしてください。
- ファイル“Making Music with Found Sounds”をLiveで開いて、見本として使えるようにしてください。
- 批評的聴取を行うにあたって、教室全体で音楽を再生できる環境を整えてください。
授業(50~90分)
- (1)はじめに:映像を見て、授業内容を紹介する(10分)。
- (2)課題の説明:グループ分けを行い、チェックリストを説明して配布する(5~10分)
- (3)課題の実践1:生徒が身の周りの音を録音する(15~30分)。
- (4)課題の実践2:生徒が録音した身の周りの音に名前をつけて保存し、共有する(10~15分)。
- (5)録音した身の周りの音を再生して話し合う。先生が話し合いを誘導する(5~10分)。
【課題を実践する別の方法】教室の外へ録音しに行く代わりに、音の鳴るものを教室に持ち込んで、それを録音してもかまいません。
はじめに:見つけた音で曲を作っているアーティスト
次のリンクをクリックすると、見つけた音で曲を作るということを生徒に紹介する参考資料を確認できます。また、曲の完成形をイメージしたり、ひらめいたりするきっかけを提供することもできます。
図書館で見つけた音でビートを作ろう
「図書館で見つけた音でビートを作ろう」は、日常生活の音が音楽に変わる様子をすばやく紹介するのに便利な動画です。
この動画には別の回(英語)もあります。生徒に紹介して興味を促すことができます。
海岸の音から作るテックハウス
「海岸の音から作るテックハウス」は、海岸で見つけた音だけを、Liveのさまざまな機能で曲にしていく動画です。技術的に踏み込んだ内容を短い動画で確認することができます。
外の音:フィールドレコーディングの流儀
「外の音:フィールドレコーディングの流儀」は、身の周りの音を録音するフィールドレコーディングの歴史と技術について掘り下げていくのに適した記事です。
授業でのポイント:音について考える
生徒に日常で体験する音を振り返ってもらうことで、身の周りの音をより意識するように促すことができます。
生徒に次の質問をしてクラスでの話し合いを誘導しましょう。それによって、生徒が音を評価して言葉で表現できるようにし、生徒の批評的な思考力の向上を図ります。
批評的思考を促す質問
- 音とは何でしょうか?
- 音楽とは何でしょうか?
- どんなものだと、高い音が鳴りますか?
- どんなものだと、低い音が鳴りますか?
- 何かから鳴った音を変更するには、どんな方法がありますか?
- マイクを置く場所によって、録れる音がどのように変わるでしょうか?
課題の実践:録音する
この課題の実践で、生徒は見つけた音をスマートフォンや携帯レコーダーで録音して集めていきます。生徒にチェックリストを参考として使ってもらい、聞くべきことやイメージすべきことに意識を向けてもらいます。 録音後は、ファイルに名前をつけて保存し、共有してもらいます。
「3~4人の生徒にチームを組ませて一緒に作業してもらえば、教室の外に出て団体行動や共同作業の力を養う絶好の機会になります」 マット・リッジウェイ(Matt Ridgway)
録音機器の種類
携帯できる録音機器には、スマートフォンや手持ちの専用デジタルレコーダーなど、さまざまな種類があります。 タブレットやMIDIノートパソコンに内蔵されたマイクでも、いい録音にしあがることもあります。
ポイント
- 携帯できる録音機器がなく、据え置き型の録音機器しかない場合は、音の鳴るものを集めて持ち帰って、据え置き型の録音機器で録音してください。
- スマートフォンを使用する場合は、非圧縮の音声ファイル(WAVファイルなど)として録音できるように音声の設定を変更し、そのファイルをスマートフォン以外でも開けるようにしてください。
課題の順序
- どんな録音機器を使用できるか調べる。
- 録音時のチェックリストと授業でのポイントを参照して、どんな音を録音できるか特定する。
- 見つけた音を録音する。
- 録音に名前をつけて保存する。
- 保存した録音を発表して話し合う。
録音時のチェックリスト
このチェックリストには、いい結果を得られる環境にするための提案と録音時のポイントが含まれています。
提案には、事細かに指示する提案と、曖昧な提案が含まれています。 これは、既存の枠組みにとらわれない思考を促すことを意図しています。
すべての項目に応じる必要はありませんが、16種類の音を集めるようにしてください。そうすれば、十分な種類の音をAbletonのDrum Rackを使って鳴らすことができます。
課題シート:録音時のチェックリスト
授業でのポイント:見つけた音の共有/名称設定/発表
「わたしが実践する教育では、生徒の作業を発表することが重要です。 それによって、多様性を受け入れる文化を促すことができるだけでなく、批評的に音を聞いて分析する機会を提供することができます。 グループでファイルを共有できる保存場所があると、共同作業を促しやすくなります」マット・リッジウェイ(Matt Ridgway)
共同作業用にファイルを保存する場所
クラウドストレージと呼ばれるインターネット上の保存環境(Google Drive、OneDrive、Dropbox など)があると、次のことを行うときに便利です。
- 生徒の作業を集めて保存するとき。
- 共有したファイルを今後の共同作業で利用するとき。
名前をつけるときの取り決め
グループや共有の保存場所を使うときは、ファイルに名前をつけるための取り決めがあると便利です。
[生徒のグループの名前]_[音の鳴るものの名前]_[音の説明]_[番号].wav
このように名前をつけるようにすれば、生徒が耳にした音を言葉で表現する機会になります。
見つけた音を教室で再生する
見つけた音を共有するもうひとつの方法は、教室で音声を再生することです。
「見つけてきた音を生徒のグループに再生してもらい、その音についてクラスの前で話してもらいます。そうすれば、生徒は自分たちの作業を振り返り、生徒同士の共同学習に取り組むことができます。また、生徒のコミュニケーション能力を高める機会にもなります」マット・リッジウェイ(Matt Ridgway)