現実をユニークに扱う:Special Guest DJ、Perila、Ben Bondyのサイケデリックな未来の音楽への旅
音楽の歴史を振り返ると、音楽の最もエキサイティングな発展を生み出すのは、大抵いつもコミュ二ティの力です。 個々のパイオニアは存在しますし、軽視されるべきではありません。しかし、ほとんどの具体的な音楽的ムーブメントは、人々がアイデアを交換し、創造性を刺激し合うことで形成されてきました。 オンラインの時代において、こうしたムーブメントは必ずしもジャンルや地域によって決められるものではなく、音楽を予想外の新たな領域へと導くという共通の哲学によって作られるのです。
3XLをはじめ、West Mineral Ltd.、Motion Wardなどのレーベルを中心に、活気ある実験的なエレクトロニックミュージックを追求するアーティスト集団がいます。その型破りなスタイルは特定のジャンルに当てはまりません。 どの楽曲にもビートらしきものはあるとしても、ダンスフロアでの機能性を考えて定型的に作られたものは、ほぼ皆無。 その音楽の多くには明確なビートはなく、水中感のあるダブっぽいドローン音の深い井戸が、アンビエントに分類されることを拒絶したようなダイナミックで落ち着きのない質感とともに存在しています。 このアーティストたちのカウンター的な精神には説得力があります。なぜなら、彼らが自己中心的な実験音楽よりも、“ユーモア”を重要なインスピレーションとしているからです。
このエレクトロニックミュージックの新しい潮流に参加するアーティストの数は、日々増加しています。レーベルは、同じ志を持ったインターネット上の若者たちを磁石のように引きつけ、従来のレコードディグではなく、YouTubeを深くあさりながらそのサンプルを調達しています。 今回は、この形なきシーンを形作る重要な仕掛け人たちに話を聞きながら、このレーベルに注ぎ込まれている哲学やアプローチを探ってみました。
3XLは、主にSpecial Guest DJ、別名Shyによって運営されています。Shyは、さまざまなリリースのために無数の仮面をかぶり、コミュニティ内の複雑にからみあう交友網の中で組んだ話題のコラボレーションを手掛けています。 アメリカ出身で現在はベルリンを拠点に活動し、音楽シーンの中心で多くの作品を生み出すShyは、アートワークやマスタリングなど、レーベルを束ねる多くの要素も手掛けています。 Shyの数多くの音楽パートナーの中にいるのは、カンザスシティ出身のニューヨークのアーティスト、Ben Bondy。 さらにPerilaは、Shelter PressやSmalltown Supersoundといったレーベルでキャリアを積み、3XLの世界とも深く関わっている多作なアーティストです。 この3人のアーティストは、Ulla StraussやExael、Huerco S.、またPontiac Streatorといった中心人物とともに、さまざまなプロジェクトで関わりがあります。しかし、彼らはすべて、それぞれ個々のアーティストとしても活動しています。
Shyはこう語ります。「僕の周りの人たちは、みんな本当にいろいろな類のものを作っていて正気じゃないんですよ。自分も含めてね。 それぞれまったく違うヒントを基に制作し、常にワイルドに変化している。だけど、ある意味で同じ変わった感性を共有しているんです」
ジャムセッション
リモートで送信するステムデータをスケッチしたり、自宅やステージ上でリアルタイムで一緒に即興演奏したりと、コラボは基本的にジャムセッションを通じて行われます。 一緒に音楽を作るときのアプローチ方法に、確固としたルールはありません。ただし、近年エレクトロニックミュージックにおいてハードウェアへの注目が再燃しているのとは対照的に、主にソフトウェアだけで作業は行われています。
「元々、機材を多く使うタイプではありません」とPerilaは言います。「そのことに少し不安を感じることもあったけど、今ではこれが自分なんだって、ますます思うようになりましたね。 自分たちがやっているすべての共同プロジェクトを考えると、そのプロセスの良さは、多くを必要としないところですね」
「誰もハードウェアを買う余裕がありませんでした」とShyは言います。 「機材を買っても、売ってしまったり飽きてしまったり、使わなくなってしまうことがありました。 でも、Pushだけは残しています。Pushは、その汎用性の高さのおかげで実際に役に立つ唯一のものだと感じているので」
どちらかと言えば、シンセや外部シーケンサーを使う代わりに、ギターを楽曲に入れることが多い彼らですが、 その音楽にはある種のロック的な底流があります。そして、それはWest Mineral Ltd.からリリースされた2020年のアルバム『 virtualdemonlaxative』でより明確になりました。その時にExaelやPontiac Streator、Shy、Ullaの4人は、デジタルで転回させたグラインドコアを作り始めました。 またShyとExaelは、Deftonesのようなくすぶった系統のニューメタルをHoodieプロジェクトで取り入れました。 トリップホップやイルビエントの影響もあり、2022年にリリースされたR&B調のPerilaの『Baby Bloom』のような、より構造化された音楽へと向かうアーティストたちもいます。
「自分のPerilaの作品では、繰り返しのビートはあまり使いません」と語るPerilaは、ExaelとのBaby Bongでは、より歌指向でシューゲイザーに影響されたコラボを展開しています。 「でも、R&Bやトリップホップのように別の角度からビートを見ると、それがとても鮮明になります。グルーヴし始めるし、声の使い方も違ってきます。だから、エクササイズ的にも、リラクゼーションの実践としても興味があるんですよ。気軽にできますしね」
Perilaは、Exaelが近々リリースするポップテイストのアルバムでも1曲、シンガーソングライターとしての才能を発揮しています。このアルバムについて、Shyは「最もみずみずしく、信じられないほど鮮明なレコードのひとつ」と力強く語っています。また、ShyとExaelは、Hoodieプロジェクトとしては最後となるコラボレーションをシンガーのJames K.とリリースします。実際、彼らが過去3年間にリリースした数多くの音楽のほとんどは、直感的な即興演奏によって生み出されてきました。 また、Critical Amnesiaは、ベルリンの同じアパートにたむろする6人の友人同士がラップトップを使いジャムセッションを行う中で結成された、偶然的な“スーパーグループ”の一例です。 レーベルxpq?からリリースされたレコードは、 幅広い音楽性を持つこの作品は、当然のことながらエネルギーに満ちあふれています。 長くリラックスしたセッションで、各アーティストはほかの全員と音で会話しながら独自のプロセスをたどりました。そして、すべては1つのミキサーに入力されて、最終的に6つのトラックに編集されました。
「Critical Amnesiaのことが好きな理由は、直感的なジャムセッションという完璧なアプローチを体現していたからです」とPerilaは話します。 「とても自由だったし、ゆるかったんです。 まったく違う種類の音楽であり、生命体のような力強さが感じられました。 それぞれ自分のツールを使っていたし、テクノのプロデューサーが5人集まったような感じではなく、オープンマインドな人たちがクレイジーで超銀河的な空間からやってきた感じでした。そこがとても気に入っていたというか。 美しさすら感じましたね」
また、Shyは「Critical Amnesiaは、今まで出したレコードの中で最も混乱を招いたレコードのひとつかもしれません」と語ります。 「そういったコラボレーションにおける自分の強みは、編集や制作全般、そして、ミキシングにあると考えています。 また、僕にはベーシストみたいな役割もあるので、Pushでベースラインを作ることも多いですね」
Shyは自分のことを、新しいプロジェクトを“まっさらな状態”から始めることを苦手と感じるタイプと認めています。そのため、友人のステムをとっかかりに、緻密な編集作業やミニマムな音作りを始める方が合ってると言います。 Shyは、より焦点を絞ったアルバム制作のために、プロジェクトのテンプレートを作れば役に立つことを理解しています。一方で整理されていないことが、自由な音楽の精神を生み出していると考えています。 だからこそ、奇想天外なオルタナティブなロックの魅力を、複雑なエレクトロアコースティック風の音と重ねる。あるいは前衛的なダブの表現と組み合わせていけるのです。 また、ジャムセッションに関しては、シンプルにサンプルから始め、何かが形になるまで直感的にデバイスを加えることが多いと言います。
「長い作品をまず作り上げ、それから編集していきます。 曲をセクションごとに細分化し、エフェクトを加えたり、バラバラにしたり、元に戻したりします」とShyは語ります。
こうして、BondyとShyが初めて一緒に仕事したとき、xphreshのアルバムは誕生しました。 二人はそれ以前から何年も知り合いでした。しかし、遠隔操作でステムとサンプルを送り合うようになったのは2021年頃のことです。 そして完成した12インチのxephonにより、 ジャングルのブレイクや揺らめく波紋、そして渦巻くアンビエンスに包まれた、3XL(bbliss/xpq?/Experiences Ltd.の3つのレーベルが合併)が誕生しました。
Bondy曰く「EPの1曲目として、構造はないけど、それでいて完成したと感じたものをShyに送りました。 そこから編集やら、何やらたくさん追加して、非常識で挑戦的なクラブのバイブスのある曲に変えていったんです。 でも実際、あの音楽は本当にロマンティックな緊張感から生まれたと思いますね」
「最初は友達だからという理由だけで音楽を作りはじめました」とShyはつけ加えます。「それからラブレターのような、ある音の形をした小さなメッセージのような、お互いに何かを伝え合う方法となりました」
素材の見つけ方
xphreshのサンプリングを多用した音色。それは3XLコミュニティではサンプリングに幅広く焦点が当てられているという特徴を表しています。 ZULIがDJ的なアプローチで新しい音源を作るように、Bondyは何でもDJソフトに放り込み、アイデアが形になるまでいじるのです。 また、バンド活動の経歴から音楽制作に進んだBondyは、“頭のスイッチを切る”実験ができるメディアを探していました。そんなとき、人気のある初心者向けDJソフトウェア、Virtual DJを見つけました。
「Virtual DJというのは面白いもので、友人たちがよく使う奇妙で普遍的なツールなんです」とBondyは話します。 「何からでも音楽が作れるような気になります。 特にPontiac StreatorのRoryは、僕がVirtual DJをやるきっかけをくれた人です。 なんせ、Virtual DJマスターなんですよ。 。 DAWも持っていないし、曲の編集もしない。 しかも、ミックスもできなし、EQで調整もできない。曲ができたと思ったらマスター作業をしてもらい、そこで完成という感じです」
BondyとStreatorがthe blessed kittyプロジェクトで一緒に制作をしたとき、周囲のアーティストを連想させる不安定なリズムのいくつかは、 Virtual DJを使って作られました。 StreatorはリズミカルなステムをBondyに送り、BondyはそれをVirtual DJに入力。そして、ジョグホイールを逆回転してリバースさせた、打楽器的なパルスを作り、最初のレイヤーとして使うために録音。 それをバウンスして再ロード。その作業を繰り返してできたステムをループさせると、奇妙なポリリズムの2倍速のビートが個々に変化するグルーヴを作り始めます。 これは“boyfriend”で聞けますが、他の曲でも見られる制作手法です。2020年のPerilaのアルバム『Everything Is Already There』に収録された“Time Swamp”にも使われています。
「crimeboysのアルバムは、実に幅広いサンプルへのクレイジーで深い愛が詰まったラブレターなんです」とPontiac Streatorとの最近のコラボについて、Shyは語ります。 「1曲目は Vangelisの““Blade Runner Blues”のサンプルで始まっています。 最初の数小節は、その曲の冒頭のパッドが混ぜられているだけです。 それからVladislav Delayのサンプル、次にBurialのサンプル、Grimesのサンプル…。まさにワイルドなサンプリングの応酬です」
「Liveは、crimeboysプロジェクトの最後に使いました。すべての曲を仕上げ、細かい部分やベースラインを追加していたからです。 エフェクトにはNative InstrumentsのGuitar Rigを多用しました。多くのいわゆるダンスミュージックが持たない密度感や雰囲気を醸し出せるからです」
サンプリングする方法も、その場しのぎのやり方を超えて、音源自体もサンプルパックやレコードのような使い古された慣習にとらわれない、より個人的で正直なアプローチに変化してきています。 Bondyのサンプリングに対するスタンスは自称“何でもあり”。時には手に入らない機材の音をYouTubeのチュートリアルビデオの中から取り出すこともあります。 それは自宅で作業する制作者が自分のレコードコレクションの中から、自分では買えないハイエンドのシンセの音を取り出していた、サンプリングの黎明期を彷彿とさせます。 同様にBondyのサンプリング方法は、“洗濯機の内部がどんな音なのか”を調べようとしたり、ハリウッドの大作映画の鮮明な音色を得るために、映画の途中ですばやくキャプチャしたりといった、インターネットの無限に近いリソースの中を漁ることに費やした無為な時間の副産物でもあります。
「インターネットには、さまざまな音源や音質があります」とBondyは言います。「そして、ジャムセッションするときに何でもありだと感じますね。 自分の音楽ライブラリがあるし、ダウンロードフォルダには、無作為にステムやあれこれが入っています。 去年やっていたポップスの曲編集の多くは、そこからできたんです。 いつも電車の中とかで聞いていたポップソングがたくさんダウンロードされているから、それを素材として自分の曲に追加したんですよ」
フィールドにて
フィールドレコーディングは、3XL周辺の音楽にもよく登場します。 Perilaにとって、フィールドレコーディングは時間をかけて深めていくプロセスであり、自身が作業する空間を記録することで、神聖な次元を持つと感じられるようになりました。 最近、Shelter Pressから出したアルバム『On The Corner Of The Day』は、フランスのトゥールーズ近郊での滞在中に制作したもの。田園地帯にあるギャラリースペースを利用できたおかげで、周囲における音響の特性への感度を高めながら集中して制作を進めることができました。
Perilaは「与えられた空間にかなりインスパイアを受けましたね」と語ります。 「Zoomレコーダーで、多くの空間やその場で歌ったものを録音しました。 また、Izotopeのグラニュラーシンセのプラグインを使ってボーカルや断片的なものをたくさん録音し、アーカイブにあった生ドラムをかなり加工しました。 ジャムセッションしているうちに、これらのものが完璧に調和し始めました。自分の気分や、夏の日差しの強い日の空間を反映したものになり、そして、光と影と戯れるようになったんです」
当初、Perilaはフィールドレコーディングした音をよく加工していました。しかし、その中でより“音を見つける”ことに気持ちが傾くにつれて、自分の創造的なアプローチを問い直すようになりました。 たとえば、洞窟の中で録音された音は、その場所の強い感覚を伴っていると感じるようになり、他の何かへ加工する意欲が薄れてくるようになりました。
「最近、特殊なリバーブや音響がある場合はほぼ生の録音を好んで使っています。そこに手を加えたり、干渉したりするのは、なんだか違法行為のように思えてしまって」とPerilaは言います。 「自宅での音楽制作やライブパフォーマンスに、実際の空間の音響をもっと取り入れることで自分がいる空間に別の空間を持ち込みたいんです」
さらに「ミュージシャンは、たくさんのエフェクトを使いがちです。 Liveを使えば簡単でしょ? でも、エフェクトを減らして、フィールドレコーディングを生音のままにすることで演奏する空間のリバーブでもっと遊べるようになります。そういうことをやっています」
音を形作る
音楽の不規則な性質を考えると、すべてのアーティストやプロジェクトのミックスダウンの方法を正確に特定するのは簡単ではありません。 ときには、主にデジタル処理やPerilaが向けた空間へのフォーカスを物語るような、ギャラリーでの鮮明な音を感じることもあります。一方で、ベースとドラムがぼやけて融合し、音楽がリバーブで溢れかえっているのを感じることもあります。しかし、共通した性質があるとすれば、それは音楽には確かに温かさがあるということ。 Shy曰く、2000年代に登場したDAWによるデジタル制作の耳障りな音を参考にしたという、Ullaの2022年のアルバム『Foam』でさえ、Perilaの好きな音楽からは想像できない居心地の良さがあります。
「ある時、Vladislav Delayのアナログ的な暖かさと複雑さに夢中になりました」とShyは話します。「レコードの質感や滑らかさ、音の鮮明さなど、その音がサウンドシステムの中でどう再現されるかについて考えるようになりました。 マスタリングでは、いつも高域の周波数に真空管のエミュレートをして滑らかにしています。 デジタルのキツい音になりかねないものを、少し丸みを帯びさせることが重要です」
初めて音楽が発表されて以来、ずっと自由に活動するうち、Shyと仲間たちは自然と制作における緻密な性質についての知識も深めてきました。 ベースをより効果的にミックスする方法を理解し始めたことで、climeboysのアルバムでは低音がより際立ったとShyは言います。 Bondyも同様に、初期のVirtual DJ時代からアプローチの幅を広げ、シーケンスやシンセを探求するようになりました。West Mineral Ltd.のアルバム『Grans Intercum』では、それが最も明確に表れています。 ただし、こうした新しいスキルを身につけることは、彼らの音楽をユニークにする本質的なものを失うリスクも孕んでいます。
「編集したり、切り刻んだり、グリッチさせたりします」とBondyは言います。 「今では、フィルターやパンをかけて空間を面白く使えるようにもなりました。それ自体はいいことだと思いますが、そういう処理のことを考えたり、あるいは気にかけたりしたいという衝動を我慢しています」
「多くの人は、特にRoryに対して、より洗練された方法で作業するよう勧めました。『曲のEQやミックスダウン、ステムの書き出しができるから、DAWで作業するべきだ』といった感じで。でも、Roryにはこう言いましたね。『そんなことしちゃダメだ。Roryの音楽に聞こえなくなってしまうから』と」
細部にこだわるミキシングより、制作工程に対するオープンマインドな姿勢が、このコミュニティの音楽に大きな影響を与えています。 ルールがないおかげで、音を生成し操作するための驚くべき方法が量産される可能性が広がります。 Shyは、幻覚のような水中効果を生み出すためにふたつの重複したパッドの位相をずらすなど、おなじみの手法を参考にしました。しかし、uonプロジェクトの傑出した楽曲のひとつ“Surface”のために作ったリズムは、幸せな偶然の一例だと説明します。
「“Surface”のリズムはImpaktorというスマホのアプリで作りました」とShyは話します。 「スマホをテーブルなどの表面(surface)に置いて、表面をタップするとリズム生成してくれます。 ターンテーブルでランアウト(レコードの最後の曲が終わった無音部分)を再生し、スピーカーの音を大きくすると、ビートがこのスマホのアプリに取り込まれ、それが不規則なリズム構造を作り出しました。 新しいやり方を見つけるとインスピレーションが湧きます。でも、そのやり方を何度も繰り返したくないことに気づきました」
「仲間たちはみんな、そういう意味では直感的なんですよ。 ただジャムセッションして、気に入ったものを見つけたら、それがどんなバイブスであれ、それに従えばどこかにたどり着くんです」
ユーモア、そしてコミュニティ
ユーモアは、このコミュニティとそこから生み出される音楽に欠かせないものです。 多くのリスナーには伝わらない、どの友人グループでもあるような内輪のジョークや引用が使われることもあります。しかし、自分たちを深刻に捉えすぎないという精神は、実験音楽に対する厳格で喜びのないアプローチが一般的化している中では新鮮に感じられます。 音楽におけるユーモアは、模倣に走るのと紙一重です。しかし、彼らのジョークはいつも卓越したサウンドに裏打ちされています。“Tomb Raider”での、Y2K(2000年代前後のカルチャー)の楽しい引用しかり、人類史上最古と名高い音楽のサンプリングしかり。
「多くの人は、アンビエントや他の音楽が真面目でアカデミックな方法で発表されることに期待しています」とBondyは語ります。「でも、正直なところ、バカであることや、ただアホになろうとすることには、実は信じられないほどの深みがあります。 ジャムセッションやVirtual DJが僕たちにとって効果的な理由も、クズみたいなやり方で仕事をするのが好きな理由もそこにあるんです。というのも、頭のスイッチをオフにしたバイブスを見事に表現できますからね」
さらにBondyは続けます。「僕とRory、Ullaで同じイベントでプレイしているとき、二人がサンプリングしているのと同じ曲のサンプルを自分のセットで使うことが今まで何度もありました。 the blessed kittyの曲にはSilent Hillのサンプルが入っていて、Hoodieも同じ曲をサンプリングしていました。別の部分でしたけどね。 イベントで『お前の曲でもモトクロスのサンプルを使ってるの?』ってみたいなことがあって。僕らの友情には、言葉じゃない会話があるんです」
このコミュニティの中心メンバーたちは、家族的な絆で結ばれています。しかし、それは閉じたサークルというわけではありません。 3XLをはじめ、West Mineral Ltd.、そして関連レーベルのカタログに見られる新しい名前の数が示すもの。それはこのグループがその音楽と同じくらいオープンであるということです。 Bondyは、それを特定の音楽の相性ではなく、共通の哲学によるものだと言います。そして、仮にすべてが偶然で無計画に見えたとしても、そこには音楽を集め、世に送り出そうという組織の原動力が存在します。
「スピリチュアルな考え方だと思います」とPerilaは言います。「自分たちが “オープンロード”と呼んでいる、制限のないアプローチや知覚の境界を常に変えたいという願望。 ShyやNaemi(Exael)のような人たちは、『これが未来的な音楽だ』なんて大げさに言わずに、ある種の未来を現在に押し進めているんです。でも、DJや音楽制作のアプローチでは、それは未来から来たものです。だからこそ、人々の心に少しずつ影響を与えることで、アンビエントのような限定された枠の中だけではなく、外側に目が向かうようになっていくと思います。そこが仲間の音楽を説明するときに気に入っている点ですね。みんなが独自のスタイルを持っていますから。 音を通して現実をとてもユニークに扱っているんです」
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文/インタビュー:Oli Warwick