現在の音楽制作で皮肉なことと言えば、DAWで細かく作り込んで複雑な制作をおこなうほど、ライブ環境での再現が難しくなる事態だろう。作ったものを単に再生するのではなく、リアルタイムの人間的な表現をライブでおこないたい場合は、とりわけ大変になる。スタジオでのセッティングをステージ用に作り変えるのは非常に厄介で、練習だけでなく、忍耐力や創造力を求められることが多い。そこで今回はクラシック音楽の要素を取り入れたエレクトロニカ作品で知られる2人組、MATTOKINDに話を聞いた。ベルリンを拠点に活動する彼らは、この試練をどのように乗り越えているのだろうか?
クラシック・ヴァイオリニストのJaeとエレクトロニックミュージック・プロデューサーのCristianoによるMATTOKINDが、初ライブをおこなうことになったとき、ふたりはデビュー作「MATTOKIND EP」を制作しているところだった(ちなみに、MATTOKINDという名前は、「気の狂った」という意味のイタリア語と「子供」という意味のドイツ語の組み合わせだ)。ライブの決定に興奮したと同時に、やらなければならないことを前に気が遠くなったという彼ら。そこで準備することにしたのが、楽曲の綿密に入り組んだ一面を犠牲にすることなく、プレイヤーとして自由に演奏をおこなえるだけの余裕をもたせたライブセットだった。その過程のすべてを彼らに同行して撮影したのがこちらのドキュメンタリーだ。