Jon Hopkins: 苦しみなくして快適さは得られない
Jon Hopkinsの音楽はまるで独自の生命を宿しているようです。同じ曲を何度も聴いても、次に再生したときには新たな発見があるかもしれません。彼の楽曲は数百もの音のレイヤーから構成されることが多く、その圧倒的な複雑さが聴くたびに新しい体験を生み出します。
デビューアルバムのリリースから約25年。彼の音楽と制作手法は進化を続けています。『Insides』(2009年)、『Immunity』(2013年)、そして『Singularity』(2018年)では、「Colour Eye」や「Open Eye Signal」のような荒々しくエネルギッシュな楽曲と、「Abandon Window」や「Recovery」のような穏やかで癒しに満ちた楽曲が織りなす、力強い対比を描き出しました。
『Singularity』以降、Jonはサイケデリック体験や意識の変容といったテーマに関心を深め、それが彼の作品の治療的な可能性へと焦点を移すきっかけとなりました。その最たる例が2021年のアルバム『Music for Psychedelic Therapy』です。そして最新作『Ritual』では、41分にわたる音楽の儀式として1つの流れで聴かれるよう制作されています。
私はロンドン・ハックニーにある彼のスタジオを訪れ、このアルバムのこと、お気に入りの楽器やソフトウェア、そしてAbleton Liveをどのように活用しているかについて話を伺いました。
『Ritual』のコンセプトやアルバム制作についてお話いただけますか?
この作品の原点は、2022年に行われた「Dreamachine」というインスタレーションにあります。このプロジェクトでは、30人ほどが横になり、完全に没入できるサラウンド音響(たしか50~60チャンネル)に囲まれるというものでした。各参加者の頭上にはストロボスコープライトが設置され、異なる速度で点滅し、いわゆる「フリッカー効果」を引き起こします。これは脳にアルファ波状態をもたらし、日中の夢想や瞑想のような感覚を生み出すものです。その結果、サイケデリックな体験に似たビジョンが生まれることもありますが、何も摂取する必要はありません。このプロジェクトに参加できたことをとても嬉しく思いました。
そのとき生まれた音楽は、プロジェクトの性質上、温かく親しみやすいものにする必要がありました。そのため非常に美しいアンビエントな楽曲ができたのですが、翌年になってそのセッションをもう一度開き、そこに拡張の余地があるかどうかを確認したくなりました。それで友人のDan [Kijowski](アルバムでは7RAYSという名義で参加)に連絡し、一緒に素材を聴き直して、どの要素が新しいアイデアの種になるか、どれが使えないかを判断しました。ビジュアルなしで成立させる必要があるので、ある部分を取り除いたりもしました。
その後、セッションを繰り返す中で、Danにいくつかのステムを渡しました。彼はIshq [Matt Hillier]と共にアナログシンセを使って膨大な量の素材を生成してくれました。その素材を受け取りながら、僕は隠れた種があるかどうかをすばやく見極めていきました。僕の得意なことの一つがそれで、素材を短時間で評価し、どの部分が使えるかを見極めることです。そこからさらに具体的なリクエストを送り、やり取りを繰り返して完成に近づけていきました。
最初からアルバムのコンセプトを持っていたのですか?
正直に言えば、僕は制作の段階でコンセプトをはっきりさせることはほとんどありません。ただひたすら直感に従い、作品が完成するまで進むだけです。本当にコンセプトが見えてくるのは、それについて説明する必要が出てきたときですね。それはあまり好きではないのですが、後になって言葉で説明する方法を見つけると、逆に興奮することもあります。
今回のような音楽に関するインタビューは、とても興味深いものです。この種の音楽を制作していると、表面的な質問をされることはまずありません。非常にニッチな音楽なので、ポップスやバンガーのようなわかりやすさはありません。でも、深く知りたい人のために情報を発信するというのは素晴らしいことだと思っています。たとえば、今日のインタビューを探して読む人は、作品についての詳細を知ることができますが、大半の人はただ音楽を聴いて感じ取るだけでしょう。それで十分です。
アルバム制作の終盤に、Danと話し合った結果、「Ritual」は儀式のように感じられるということに気づきました。それからは、ろうそくを灯す音など、儀式的なサウンドを取り入れ始めました。
リスニング体験は主観的なものだと思いますが、それについてどう感じますか?
確かに、音の聞こえ方や解釈は人それぞれですし、聴くタイミングや心の状態によっても異なりますね。僕自身のアルバムでも同じで、聴くたびに新しい発見があります。それは、すべての作品に膨大なディテールを詰め込んでいるからだと思います。意図的にそうしているわけではなく、直感的にそういうアイデアが生まれ、それが正しいように感じるからです。また、最近は音を「削る」ことにも力を入れています。空間を残すことで音楽の奥行きが生まれるんです。
最近開催しているリスニング体験では、どのような「旅」を表現していますか?
アルバムには僕なりの物語があるのですが、それを明かすことは控えています。聴き手の解釈に影響を与えたくないからです。ただ、「英雄の旅」のようなアークを持っているのは確かです。最初は安心感があるけれど、次第に深刻になり、崩壊の寸前まで緊張が高まります。そして勝利、幻滅、統合、再生という流れが続きます。特に意識して作ったわけではありませんが、振り返るとそういう要素が僕の作品には一貫してあるように思います。
『Ritual』も一つの作品として書かれました。トラックの区切りは後から入れたもので、もともとは8曲に分けるつもりではなかったんです。でも、レーベルとの契約上そうする必要がありました(笑)。
パートに分けたほうが現実的だと思ったんです。実際、多くの人は全編を通して聴くわけではありませんし、章ごとに名前を付けて、ある種の構造を持たせることができます。真剣に向き合う人は、結局すべてを聴いてくれるでしょうし、主要なストリーミングプラットフォームではギャップレス再生も対応していますから。
リスニングセッション中にどのような反応を観察していますか?
実は、僕自身はセッションの場にいないことが多いんです。僕がそこにいると、それが参加者に影響を与えてしまい、変なダイナミクスが生まれる可能性があるので。これは「上映会」とも少し違うし、「パフォーマンス」とも言い難いですね。というのも、非常に没入感のある音響体験でありながら、視覚的な要素はほとんどないからです。控えめな照明や薄い霧の演出を加えましたが、基本的には視覚的な刺激はなく、参加者は自然と目を閉じるように促されます。
僕にとってこの作品は非常に「動的(kinetic)」なものなので、いつか屋外でのバージョンを実現したいと思っています。巨大なPAシステムを並べ、参加者を円形に配置するようなものです。そうすれば、もっと自由に動いたり、踊ったり、思い切り楽しんでもらえるのではないかと思います。でも、現状のセッションでは、参加者は座ったり、横たわったり、ヨガのポーズを取ったりすることが一般的です。その中で多いのは、涙を流したり、呼吸法を取り入れたりする反応ですね。
これまでにいくつか開催しました。たとえば、ベルリンやアムステルダム、ロンドンではICA(Institute of Contemporary Arts)で7〜8回行いました。その中で、ある土曜の夜のセッションでは、明らかにトリップしている人がいて、他の回に比べて部屋全体のエネルギーが圧倒的に高かったのを覚えています。リラックスした雰囲気とオープンさが漂っていて、意識が変容した状態で聴くと、全く別次元のレイヤーが現れることを強く実感しました。
ただ、残念なのは、次回のセッションが月曜日の夜に行われることですね!(笑)
この作品には最終的に何層の音が使われているのでしょうか?
最終的には383層です。ピーク時には440層までありましたが、そこから簡略化しました。楽器セクションごとにグループ化されていますが、イントロ部分はすべて一つのグループになっています。その中にもさらに多くのサブグループが存在しています。
Matt(Ishq)が手がけた素材については、彼自身もその音の出どころを説明できないでしょう。というのも、彼は膨大なサンプルライブラリを持っていて、長年にわたって理由もなくサンプルを収集してきたからです。彼は人生のどこかの時点で、ほとんどすべてのシンセを所有していたと思います。一つ買っては大量の素材を録音し、次に売りに出す。その繰り返しで作られた音が今回の一例です。
彼は珍しいKorgシンセに夢中で、KronosやZ1など、ユニークなサウンドを持つ機種を特に好んでいます。
ここで聴いているサンプルはそのままの音ですか? それとも処理が加えられていますか?
大量の処理が施されていますが、すでにプリント(書き出し)されています。この段階ではEQを少し調整しているだけですね。これで音を少しだけ整理しています。
おそらく、この音のピッチを1オクターブ下げ、Altiverbで「Great Pyramid」のリバーブを使ったと思います。不思議なことに、このアルバムを作っている間、エジプトが頭から離れなかったんです。
Altiverbについてお話しいただけますか?
Altiverbは『Immunity』の頃からずっと使っています。このアルバムでは、インドの霊廟「Golgumbaz」をモデルにしたリバーブを使っています。この音は、Mattが手がけた素材と組み合わせると非常に独特で、即座にムードを変える力があります。たとえば、ベルの音やMattのサウンドを重ねると、すべての要素が統合されて一つのサウンド空間、まるでその場に自分がいるような感覚を作り出すんです。Altiverbのリバーブは非常に没入感が強く、スピーカーから音が聞こえているのに、遠くから鳴っているように感じることがあります。
サウンドスケープの「完成」はどう判断していますか?
シンプルに「良い音だ」と思えたときです(笑)。僕の制作方針は「良いと思うまでやり続ける」。直感に頼ることがほとんどですね。
このベース音はどこから来ているのですか?
これは僕のピアノから取った音です。低音域ではオーガニックなサウンドがとても重要だと思っています。時には、低音に関してはシンセサイザーでは表現できないものがあると感じます。
あなたの楽曲ではアップライトピアノをよく使いますね。特にアルバムの終盤では、困難な旅の後にリスナーを家へ迎え入れるような感覚を覚えます。
そう、その通りです。僕にとってこのアップライトピアノ(Yamaha)は「ホーム」のような存在で、1989年以来ずっとそう感じています。以前はボウのスタジオにありましたが、今はここにあって、もうこの場所を離れることはないでしょう。
面白いのは、年月を経て弦が劣化してきたことです。でもそれが独特の味わいを生んでいます。低音域はもうそれほど良い音ではなくなっています。最後に良い低音が録れたのは、『Music for Psychedelic Therapy』の「Sit Around the Fire」ですね。あの曲が低音弦の最後の輝きのようなものでした。現在は、鍵盤の中央部分だけが良い音を保っていて、高音域は少し不安定になっています。ピアノ調律師にも「これはもう弦を全部張り替えるしかないか、このままの状態を受け入れるしかない」と言われました。でも、この劣化が音にポジティブな影響を与えると考えて、むしろ楽しむべきだと思っています。クリーンな音が必要なときは別のピアノを使いますけどね。
これは、Vylanaが何かに火を灯している音を表現しています。最初の1、2回は、両サイドのろうそくに火をつけているだけかもしれません。でも、3回目には予想外の何かが起きる、そんなイメージです。これらの音はそれぞれ異なる場所から聞こえるように配置されていて、最後のライターの音では、一連の出来事が一気に引き起こされるような仕掛けになっています。
おそらくAbletonのReverbを使っていますね。実はいつも使っていて、とても「宇宙的(cosmic)」な響きがします。リアルなリバーブが欲しいときには使いませんが、広がりのある空間的なサウンドが欲しいときには最適です。特に、持続する独特な共鳴音を生み出す点が気に入っています。このリバーブをプリントして、ピッチを1オクターブ下げたり、さらに別のリバーブを重ねてもう一度プリントすることもあります。
音のワープ処理では、通常はComplexアルゴリズムを最もよく使います。Complex Proは、フォルマントを埋める必要がある場合にのみ使用します。ただ、こういったサウンドデザインでは、可能な限りストレッチ処理を避けるようにしていて、必要なければWarp自体をオフにします。
通常こういったことはあまりしないのですが、イギリス人のコラボレーターたちと一緒に、この部屋でサラウンドマイクを使いながら、自分たちが動いたり、歩き回ったりする音を録音しました。このプロセスを通して、作品に「生命感」や、この作品を生み出した人々のエネルギーを吹き込むことを試みました。
この音は、眠りに落ちる瞬間や昼寝をしているとき、隣の部屋で誰かが物を動かしている感じに似ていますね。それがとても心地よいです。
そうですよね。そのアイデアがどこから来たのかはわからないのですが、こういうことをやり始めたのはかなり前です。たとえば、2009年に制作した「Heron」という曲があります。これはとてもニッチなJames Yorkeのカバー曲なのですが、そのとき僕は古いスタジオにいて、隣のキッチンでCherif [Hashizume]が実際に皿洗いをしていました。その音がトラックに入っているんです。当時はピアノを録音していたのですが、皿洗いの音がとても心地よく感じられて。幼い頃に聴いていた音のように親しみがあったんですよね。それで、そういう「音を排除する」のではなく、むしろ積極的に活かして、作品の一部にするようになりました。今ではそれを意識的に行っています。
イントロの後に移行する「普通」のセクションについて教えてください。
これはいわゆる「red herring(おとり)」的なセクションです。一見すると普通のアンビエントアルバムかと思わせる部分ですね。極端なものを提示する前に、一度普通を見せる必要があります。極端さだけでは、極端に感じられないんです。快適さと不快感はセットで存在するものなので。
実を言うと、このセクションが一番のお気に入りです。僕は割と「楽な人生」が好きですから(笑)。このトラックはほとんどMoog Oneだけで構成されています。
このサウンドたちはステレオフィールドのあちこちに配置されていますよね?
その通りです。Atmosでミキシングしたときは本当に驚異的でした。文字通り想像できることを何でも実現できます。ただ、Atmosミックスは最後の段階でのみ行うのが重要だと考えています。制作中はあくまでステレオに集中し、それを後からAtmosに翻訳する形です。制作段階で音を背後に回したりする必要はありません。このアルバムでも、たくさんの音のレイヤーが組み合わさって一つの音の絵を描いています。
このヴォーカルには女性的なエネルギーを感じます。
その指摘は興味深いですね。実は、このアルバムには最初その部分が欠けていたんです。多くの女性が制作に関わってくれましたが、電子的な要素が支配的だったため、どこか「男性的」なエネルギーが強かったんですね。ストリングスやヴォーカルのセクションは、その女性的なエネルギーをもたらしてくれました。特にVylanaが加えた空気感や生命力、愛が作品に不可欠でした。また、EmmaやDaisyもその役割を果たしてくれましたね。純粋に電子音だけで構成されていたときは、バランスが取れていなかったと思います。
これらすべてを通して見ると、まるでフラクタルのようですね。層の上にさらに層が積み重なり、それらが調和して一つにまとまっている感じです。単独で聴くだけでも十分に面白い仕上がりになっていると思います。
「Badalamenti Bridge」という名前のクリップについて教えてください。
これは『Twin Peaks』のスコアや、Angelo Badalamentiが手がけたDavid Lynch作品のスコアで、ストリングス奏者がコントラバスのブリッジ部分で演奏するスタイルにインスパイアされています。この音には特別な魅力がありますね。
このサウンドにはAbleton LiveのDelayプラグインをプレディレイとして使用しています。100%ウェットでフィードバックはなし。この方法で250msのリバーブでは足りないときに、深みを補います。Reverbは空間的な深みを作り出し、Altiverbは有機的な側面を担います。Altiverbでは「Great Pyramid」の「King’s Chamber」をよく使いますが、リバーブタイムはそれほど長くしません。この組み合わせが新鮮で独特な感覚を生み出してくれます。
このアルバムでは、この音を「ポータル」と呼んでいます。それがアルバムの中での役割のようなものだからです。このサウンド自体は、一見すると何なのかよくわからない音です。Mattが送ってきたランダムなシンセの音ですね。何度も聞き返して「これなんだ?」と思うような音ですが、そこが面白いんです。
ポータルはアルバムの中で3~4回登場します。2回目以降はさらに何かが追加されていきます。この構造は、アルバム冒頭のライターの音と似ています。何か予想外の出来事が音を引き起こすような仕掛けですね。
この音は少し不穏な感じがしますね。
そうですね、そしてそれが意図的でもあります。その下にはいくつもの異なるディレイが重なっています。僕はいつも「ある音が別の音によって生まれた」という感覚を作ろうとしています。それが物語のような一体感をもたらすからです。この「ポータル」の音が最後に登場するのは、作品のクライマックスの瞬間ですね。
これは「Prophecy」という古典的な90年代のシンセの音です。そこにチェロかバイオリンの音をクォータースピードで加えています。
その後にドラムが入る部分ですが、静かでスムーズなアンビエント作品だと思わせておいて、突然驚かされるような感覚を狙ったのでしょうか?
その通りです。
DanがCirklonシーケンサーを使っていて、これが異なる長さのループを簡単に作れるんです。それによってポリリズム的なものが構築されていきます。Danはハードウェア派なので、Cirklonを使うことで独特のニュアンスが生まれます。このドラム部分でも、普通や予測可能なものを避けて、カオス的な要素を取り入れました。ただし、それらは一貫した論理の中で起こっているんです。まるで異なる速度で周回している惑星のような感じです。
ソフトウェア楽器は使いますか?
いいえ、基本的にソフトウェア楽器は使いません。ただ、サンプラー系のものは使いますね。たとえばNils FrahmのUna Cordaは、『Singularity』や『Music for Psychedelic Therapy』でよく使いました。今回のアルバムでは使っていないと思いますが。
AbletonのSamplerとSimplerはもちろん素晴らしいです。自作のラックを作ったりしますが、元の音源としてはリアルなシンセやピアノ、生楽器しか使いません。それは信念やポリシーというわけではなく、ただインスピレーションの湧き方が違うからです。ハードウェアで音を実際に触って調整することで、より創造的になれるんです。音のデザインは後から考えればいいというスタンスです。
挫折やクリエイティブな行き詰まりをどう乗り越えますか?
基本的にはスタジオを離れます。昔はスタジオにこもって苛立っていましたが、今はそうしません。1日の制作時間は平均して3~4時間くらいです。それ以外の時間は、脳は何か考え続けているかもしれませんが、別のことをしています。
時には夜中にアイデアが浮かぶこともあって、正直それは面倒ですが、半日を制作以外のことに費やすのがベストだと感じています。
運動もとても大事です。ずっと椅子に座って巨大な画面を見つめる生活は健康的ではありませんからね。僕のスタジオの上にはジムがあるので、そこに行って体を動かします。また瞑想や、冷たい水への飛び込み、サウナも好きですね。身体を活性化させることで、脳が自然とクリエイティブな行き詰まりを解決してくれます。そして、時には音楽の特定のセクションとしばらく向き合う必要もあります。
少し名前を挙げて恐縮ですが、[Brian] Enoから学んだのは「楽しむことが大切」ということです。細部にこだわるのは、本当にそれが楽しいときだけにすべきです。そしてそれは制作の終盤に行うべきで、最初の段階では全体像をスケッチするように素早く作業するべきです。セッションがカオスでも、後で整理すればいいんです。優秀なエンジニアがいれば、作業を効率的に進められます。
リズムやテクノ的な要素を作りたいという衝動はありますか? それとも、瞑想的で非リズム的な側面により惹かれていますか?
この作品は非常にリズミカルですが、そのリズムに到達するまでに時間がかかります。中心部分の15分間はリズムが絶え間なく続きます。正直に言えば、これからも両方の要素を作り続けると思います。ただ、このアルバムは重い作品だったので、次はもっと軽やかで楽しいもの、たとえば4分間のバンガーやリミックスを作りたい気持ちがあります。シンガーとコラボしたり、ポップ寄りの作品を作るのもいいですね。ただ、テクノに戻ることはあまり考えていません。それよりも明るい作品を作りたいですね。
初めてのアルバムをリリースしたとき、誰にも聴かれませんでした。2枚目を出したとき、1枚目を気に入った人が「これじゃない」と感じました。そして『Insides』を作ったら、それまでの2作を好きだった人たちが「尖りすぎている」と言いました。『Immunity』を作ったら、今度は『Insides』を好きだった人たちが「テクノっぽすぎる」と失望しました。『Singularity』を作ったら「Immunityに似すぎている」と言われました。でも最後の2作を作るころには、音楽がどう受け取られるかを完全に考えなくなりました。ただ「作られるべきもの」を作っているだけです。それ以外の理由はありません。それでも25年経った今も聴いてくれる人々がいることに、本当に感謝しています。そしてそのすべての作品の核にあるのは、一つのメッセージだけなのです。
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文・インタビュー: Hal Churchman
写真: Imogene Barron