完全無欠のトラックを耳にして、いったいどうやって制作されたのだろうと不思議に思ったことは少なくないでしょう。パーフェクトなミックスダウンは、得体の知れない手の届かない存在のように思われがち。一流のプロデューサーたちと同じツールを使って制作しているにもかかわらず、同じようなサウンドにならない場合はなおさらです。もしかすると、有名アーティストのLiveセットには、スタジアムを熱狂させるセットと物足りなさを感じさせるデモとの違いを明らかにする秘密が隠されているのかもしれません。
幸いなことに、オランダEDM界のベテランLaidback Lukeが私たちのこの好奇心に応えてくれました。クリエイティブな共有プラットフォームSpliceから彼の作品『Stepping To The Beat』のLiveセットをダウンロードし、その内容を分析してみましょう。LukeのLiveセットを入手するには、Spliceアプリをダウンロードする必要があります。Liveセットをダウンロードして、彼のテクニックをご自身でも試してみてください。Abletonは、ステレオでミキシングすることの危険、レイヤーの重要性、クラブのシステム用のミックスダウンについてLukeに話を聞きました。
Laidback LukeのLiveセットをSpliceからダウンロード
Laidback Lukeの『Stepping To The Beat』
このトラックにはかなりのレイヤーが使用されていますね。これらの要素の座りをよくするためにEQとエンベロープの操作にかなりの時間をかけているのでしょうか?バランスの取れたレイヤーを実現するのに頼りになるメソッドは何かお持ちですか?
適切なレイヤーへの鍵は、周波数間の差異を見つけ、それを、それぞれの周波数で突出しているサウンドで埋めていくことです。「リード・サウンドがちょっと薄いな」と思ったら、300Hz域に目立つサウンドを探す、といった感じの簡単なことです。2種類のサウンドだけなら、EQで300Hz的なサウンドから3kHzの一部を除きます。そしてリードには300Hzサウンドが含まれないようにします。こうすることで、2つがまるでパズルのピースのようにうまくかみ合うようになります。これらを1チャンネルにまとめ、糊の役目を果たすコンプレッションを少しかければ、1つのユニットとして機能するようになります。
クラブ・システムでサブ・レベルをテストすることの重要性についてお話しされていましたが、定期的に大型モニターに触る機会のない人たちに何かアドバイスをいただけますか?低価格のバスレフ型モニターではローエンドの聞こえが分かりづらくなることがあるため、高品質のヘッドフォンがよりふさわしいかと思うのですが。
私は、すべてSOL Republic Calvin Harris XCヘッドフォンを使用して制作しています。スタジオでもですよ!完全にヘッドフォン系プロデューサーです。実をいうと、約20年ほど音楽制作を続けるうちに、耳が敏感になってきて、スタジオ環境のいわゆる「スイート・スポット」というのに我慢できなくなってしまいました。室内にスイート・スポットがあるということは、頭の位置を変えるとサウンドが変わってしまうとことになります。つまり、突然ミックス全体の聞こえが一変してしまうということです!これにはもう耐えられません。ヘッドフォンを使用すれば、こういった状況を排除できます。その後で、使用可能なシステムを利用してチェックするのはいいアイデアでしょう。ラップトップのスピーカー、車内、電話などですね。
過剰な周波数を見失わないためにヘッドフォンでの操作で最も重要なのは、制作中の自分のトラックと、どこでも優れた聞こえ方をするプロのトラックとのA/B比較をコンスタントに行うことです。プロのトラックは、優れたサウンドを導く原理であり、地図であり、ガイドラインです。
自分のサウンドのヘッドフォンでの聞こえ方が、これらのサウンドのヘッドフォンでの聞こえ方と同じになるようにすればいいのです。ただし、ヘッドフォンでは、モノでのミキシングが重要です!私の口癖は、「モノこそ真実」です。
トラックのステレオ・イメージは簡単に耳を欺きます。ですので、私はトラックの仕上げの最後の段階でステレオにします。
スタジオで作業しながら、クラブで要求されるエネルギーのレベルを保つ方法についてはいかがですか?スタジオにいながらオーディエンスを意識したサウンドのイメージを作り上げるのは難しいというアーティストもいますが。
その通りです。繰り返しますが、だからこそ自分の作品とクラブでいいサウンドをもたらす作品とを比べる必要があるのです。これがガイドラインになります。参考にしているトラックに比べて、自分のトラックのサブやミッドレンジが強いと思ったら、それは、クラブでプレイしたとき問題を生じさせる周波数が含まれていることのサインです。
Laidback Lukeについて詳しくは、ウェブサイトおよびSoundcloudをご覧ください。