音楽が人生を豊かにしてくれるものだという認識は、万人に近いくらい共通していますよね。若いころから学校で曲作りを学ばせたら、生徒の総合的な成長の大切な一要素になりえると、大半の人が同意すると思います。 では、幼稚園から高校卒業までの音楽教育が、ほとんどと言っていいほど、音楽制作を始めるきっかけになっていないのは、どうしてだと思いますか? アメリカを例に挙げると、中学生と高校生の大半が音楽の授業をまったく取っていないという統計が出ています。 生徒を引きつける魅力的な音楽教育が学校で提供されていなければ、音楽を作る楽しみに触れる機会は、周囲の状況や偶然、そして運まかせで決まってしまうことになります。
幸い、こうした事態に対処しようと試みる教師の数は増えていて、異なるアプローチが授業に持ち込まれています。そのアプローチとは、生まれながら生徒に備わっている“何かを生み出す創造性”を、音楽教育に触れてもらうきっかけにするというもの。 このアプローチでは、普段から聞いている音楽を生徒に作ってもらうことが主軸となって、授業が行われます。 簡単そうに聞こえるかもしれませんが、今回のドキュメンタリーを見れば、そうではないことがわかります。生徒たちにとって旬の音楽を常にチェックしておく、新しい技術を把握して授業環境を維持する、音楽教育に対して従来の考え方の人たちを説得するなど、そこに関わる教師たちは、多数の課題に向き合っています。
それでも音楽教師たちがやりがいを見出す理由は何なのか? それは、ドキュメンタリーに登場する生徒たちから伝わってきます。 学校に行くのが楽しくなった、コースの期間中に成長を実感できた、人生の目標が見つかったなど、授業に対する反応は生徒によって実にさまざま。いずれにしても、授業をつうじて創造性のスイッチを入れることで、生徒の歩む道や可能性がクラスルームを越えて大きく広がれば、教師としてこれほどうれしいことはありません。
そうした新しい音楽教育に挑む3人の教師とその生徒たちをつうじて、音楽制作の持つ可能性に迫ったのがこちらのドキュメンタリーです。