Photo by massbendslight.com
Berlin Atonalフェスティバル最終日にヘッドライナーとして登場したBrandt Brauer Frick Ensembleは、優れたパフォーマンスで魅了したラインナップの中でも特に注目を集めました。クラシック畑出身の7名のミュージシャンをバックに加えたキーボード、エレクトロニクス、ドラムのトリオは、巧みで緻密なインストゥルメーションと一緒にリズムを取らずにはいられないリズミカルな相互プレイで、6夜にわたる冒険心豊かな音楽の祭典Atonalの最終夜を見事に締めくくりました。
Brandt Brauer Frick Ensembleについて詳しくご存じない方は、ぜひ楽曲「R.W. John」のリハーサル風景を撮影したビデオをご覧ください。
Abletonは、Atonalでのギグを数日後に控えたPaul FrickとJan Brauerにインタビューし、創作プロセス、相反するものから生まれる効果、輪郭のくっきりとしたシンセ・サウンドなどについて話を聞きました。
皆さんの音楽からは、いくつかの相反する美意識、スタイル、テクニックが交差するイメージが思い浮かびます。ダンス・ミュージックとクラシック音楽、シーケンスされた音と実際に手で演奏される音、シンセ・サウンドとアコースティック楽器、クラブ・カルチャーと知的文化 – これらの取り合わせは、一般的に正反対なものと考えられています。こういったコントラストは、作曲の際どれほど意識的に選択されているのですか?
昔はこのことについてよく考えました。メンバーと出会ったとき、互いのバックグラウンドについて知っていましたし、私たちの目的は主にアコースティック楽器を使用することでしたから。いつの間にか独自のスタイルができあがっていることに気づいたのは、後になってからのことです。それ以降は、そのことについて考えることは少なくなりました。作品を作り始めるときは – アドリブから始まることが多いのですが – 何でもありという気分でやっています。
現在この世に存在する膨大な技術を活用することに興味があります。たとえばグランドピアノという楽器は何世紀にもわたって現在の形となった訳で、この楽器で新しいテクニックを使用することもできるはずです。さまざまな手法を組み合わせて使用できること、そこに想像力をかき立てられます。
つい最近、自分たちのレーベル用にトラックを作成したのですが、そのトラックで使用されている実際の楽器はハイハット1つだけで、残りはすべてアナログ・シンセサイザーでした。このエピソードからもお分かりいただけるとおり、私たちは、クラシック楽器だけを使用するのがトレードマークのグループになろうとしている訳ではありません。実はこれまでもずっとアナログ・シンセサイザーを使用してきたので、こういったイメージは間違っているのですが。
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どんな楽器を使用するかよりも、音楽を通じて表現する内容の方が重要だと私たちは考えています。私たち自身もさまざまな事柄に関心を持っています。自宅でテクノを作曲し、夜にはクラシック・コンサートに行くということは、私たちにとって矛盾したことではありません。出かけたり、ウェブをチェックしたり、コンサートに行ったりする際に目にするさまざまなものにも矛盾はありません。全ての事柄は互いに影響し合っています。ですから、特に意識して相反するものを組み合わせようとしているのではありません。
今日の興味深い音楽作品の多くはハイブリッドであることが多いと思います。
一部の音楽プロジェクトには、その「ハイブリッド」な音楽要素がより表面に現れてくることがあります。
そうなると、それはクロスオーバーですね。
クロスオーバー、フュージョン – こういった表現が好まれない場面もあるようですが。
私たちの音楽がクロスオーバーやフュージョンといった言葉で表現されることには違和感を覚えます。技術や知識といったあらゆる文化的な功績が一体となるとき、それは非常に複雑で多様な側面を持つものです。Brandt Brauer Frickでは、異なる素材が互いにうまくコミュニケートできるよう、ディテールに至る深いレベルで融合されていると思います。
皆さんが見いだそうとしているのは、興味深いコントラストを描く相反する要素でしょうか?それとも、異なる時代やスタイルの間にある何らかの共通項なのでしょうか?Brandt Brauer Frickの作品は、1960/70年代のミニマル・ミュージックの反復するリズム・パターンを思い起こさせますが、これは、ループベースであるテクノの先駆けといってもよいかと思います。これについてはいかがですか?
私たちにとって固定の要素というわけではありませんが、おっしゃるとおり、その要素を私たちも採り入れています。さまざまな音楽の間にはこのような共通点が存在しています。それらを結びつける必要があるのです。ミニマル・ミュージックとテクノの間に関連性を与えたのは私たちが初めてではありませんが、他と少し違うのは、私たちが共通点だけでなくコントラストも採り入れている点です。
直前のツアーでは、Roland Juno 106やSH-101といった優れもののアナログ・シンセをいくつか購入しました。特にJunoは…どう言ったらいいのか、とにかく最高なんです。サウンドの輪郭がはっきりしていて、これまでの私たちのスタイルにはない音楽要素を提供してくれます。このコントラストが気に入っています。それに巨大です。同じくサウンドも太いので、調整は必須です。シンセ・サウンドには低域を追加するのが一般的だと思いますが、このマシンでは逆で、太すぎるくらいです。
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サウンドの話が出たところで、作曲、レコーディング、そして楽曲を演奏する際のプロセスについてお聞かせください。
スタジオに集合して、何か新しいことを始めるというのが主です。基本的に、スタートの仕方や制作方法にいつもとは少し違った手法を取り入れようと心がけています。誰かのアイデアをもとに、ドラムのマイク録音から始めることがほとんどですね。ときには、以前作成したビートをベースに演奏してみて、後でビートをカットして新しいビートを追加し直すこともあります。
しかし、ドラムが全てではありません。大切なのは、すべてがスムーズに絶えず進むこと、ジャム・セッションが中断されないことです。もちろん、合間に編集やアレンジを行うことは必要です。そうしないと作品は生まれませんから。しかし、私たちにとって、ジャムが続くことが重要であり、編集作業は再生中、録音中に同時に行うものなのです。
重要なのは、簡単に録音でき、同時に演奏できること、マイクをすばやくセットして録音すること、それに尽きます。レコーディングは自然な形で始まります。カウントダウンで始まるような構えたスタイルの従来のレコーディングは、私たちには合いません。
また、プロセス上のアクシデントも作品の一部として取り込みます。私たちの最新アルバムをヘッドフォンで聴くと、バックグラウンドに話し声などが聞き取れるはずです。ちょっとロマンティックな見方かもしれませんが、こういったディテールは「この音楽は日常から生まれてきたものである」と思わせてくれます。
私たちは、作曲し、それらをレコーディングしようと考えるグループではありません。私たちの場合、まず録音という行為があり、楽曲制作はその後に行います。
Brandt Brauer Frickのウェブサイトでは、すばらしいビデオやサウンドの数々をご覧いただけます。