Timbalandから学んだ5つのこと
「Quincy Jonesがいるだろ。あの人は50歳のときに『Thriller』をやったんだぜ! じゃあ、俺の『Thriller』は何? それを目指してるんだ」。過去30年間に活動しているほとんどの野心的なプロデューサーなら、これとまったく同じ発言をしたことがあるかもしれない。ただ、これがほかならぬTimbalandことTimothy Mosleyから発せられたのは、少し驚きかもしれない。Missy Elliot、Justin Timberlake、Beyoncé、Jay-Zのほか、多数のアーティストの、時代を象徴する大ヒットを40歳までに手掛けてきた人なら、惰性で活動して早々に引退しても、まったく問題のない、言うならば、よくあるキャリアコースになるだろうからだ。
ところが、現在のTimbalandはかつてなく多忙で精力的だ。それに、未来や自分の技巧の進化を見つめていなければ、Timbalandではなくなってしまう。 技術面で言えば、Timbalandの近年の大きな変化として、キーボードのワークステーションからAbleton LiveとPushを中心にした制作セットアップに移行したことが挙げられる。 そのため、Timbalandがビデオレッスン「Masterclass」(英語)を担当するということを耳にしたとき、インストラクターの役割を務める彼がどんな見識を教えてくれるのか気にならないわけがなかった。 Masterclasssへ連絡を取ったところ、ありがたいことにTimbalandの極上の知識をいくつか紹介させてもらえることになった。
最初にすぐはっきりするのは、Timbalandは音楽に明け暮れているということだ。 言うまでもなく誰もが自分のなかに音楽のアイデアを持っているが、よく問題になるのは、どうやって、もしくは、どこから始めればいいのかわからないことだ。 Timbalandはそうした初期のアイデアをスムーズに出していく方法として、曲作りを始めるときに誰もが持っている楽器を使う。声だ。
※このページに掲載しているビデオの言語は英語のみです。
Timbalandが強調するもうひとつの重要なポイントは、しっかりと準備をするといいということ。ただし、セットアップ、制作手順、アプローチには意外な要素を取り込む余裕を残しておくことも大切だ。
複雑に入り組んだリズムパターン、そして、独特な音色や質感は、Timbalandのキャリアをつうじて自身のサウンドの特質となっている。 これぞまさに、Timbalandがほかのプロデューサーからここまで広く評価され、研究されている理由だ。 では、Timbaland自身は何を研究しているのだろうか?彼のインスピレーションは頻繁に遠く離れたところからやってくると聞いても、驚きではないだろう。
音楽制作者、なかでも、ひとりで作業する音楽制作者が作業でよく行き詰まるのは、トラック、曲、もしくは、ビートがかたちになり始めたものの、まだいろんな方向で進められるときだ。 進むべき方向を決めるのが実に悩ましいこともある。 Timbalandに言わせれば、そういうときこそ作業を止めて、とにかく音楽に耳を傾けるのだそうだ。 そうすることで、コンピューター画面以外に意識を向けるのに役立つ。ちょうどこちらでTimbalandが説明しているように。
そして最後は、本当に煮詰まってどうやって続ければいいのかわからなくなった状況に対する名言だ。レッスンの締めくくりにTimbalandは次のように述べている。「イライラしていたら、それは良い兆しだ。 本当に好きってことだから。見せかけじゃない。 ケンカみたいなものさ。 どっかに行って、別の日に戻ってくればいい。 答えはそこにある。好きな気持ちはそんなことで消えたりしない」